Ideal World

 近年のSNSの普及により、WEB上には「公開されることを前提(目的)として」撮影された
と思われる写真が氾濫している。また、かつては特別な技術であった写真の加工は、
今やスマホのアプリケーション一つで誰でも手軽に行える様になり、「より良く見られたい」
という人の欲望はある種盲目的とも思えるレベルの加工を無抵抗に受容させ、
現代における写真はそれまでの「記録性」に加えて「理想化」という役割を広く担うようになった。 これは言い換えれば、もはや人々が写真に「真実」を求めていないということを意味する。


  我々はこれまで過去に撮影した(された)写真を参照することで、脳内で曖昧になった過去のイメージ(現実)に鮮明な輪郭を与えてきた。しかし、「理想化」された写真の蓄積は
記憶の不完全性と絡み合うことで「あたかも本当にそう(現実)であったかのような」錯覚を
人々にもたらした。こうして写真は「記憶の補完」に留まらず大衆レベルで「記憶の書き換え」を
誘発する道具となった。  ここに於いて各人の「理想の世界」は「現実」のものとなる。


     ( personal work 「 Ideal World 」より )

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